MS-DOSは、Microsoft Disk Operating System の略であり、x86 CPU搭載のPC/AT互換機においてFAT/File Allocation Tableというファイルシステム上に実装された文字ベースのユーザーインタフェースを持つソフトウェアであるOSを指します。
1981年にIBM PC/AT用にMicrosoft社がOEM供給することになった"PC DOS"をPC/AT互換機メーカー向けにMicrosoft社オリジナルOSとしてリリースしたのがMS-DOSです。
その後、これらとの互換性も考慮されたDR DOS(DR-DOS)やFreeDOSなども登場しました。
FreeDOSは重宝され、広く利用されており、KNOPPIXのとあるLiveCD版(iso)を利用した際にもFreeDOSが収録されていました。
MS-DOSは、それまで8ビットのCP/Mが主流だったOS市場でFAT16(16ビット)上で動作するOSとして登場しますが、後に初期のFATはFAT12としされフロッピー用のファイルシステムと区分されるようになり、このことから、MS-DOSも自ずとFAT12/FAT16対応となり、後にFAT32にも対応するに至りました。
新たにVFATというFAT12/FAT16/FAT32に対応するファイルシステムができ、Windows 3.x(3.0/3.1)や初期のWindows 95はFAT16、または、VFAT上に実装され、当初からFAT32(32ビット)上で動作するように設計されたOSは、Windows 95 OSR2からとされています。
そうした変遷の中でMS-DOSは、MS-DOSを予めインストールした上にインストールすることで動作するWindows 3.x系(Windows 3.0/3.1)でも使われていました。
Windows 3.x系の後継であるWindows 95の内、初期のWindows 95(95/95 OSR1など)は、FAT16上に実装されると共に同じくFAT16ベースのMS-DOSもサポートされていました。
FAT32対応となったWindows 95 OSR2、その後の98/98SE(Second Edition)においては、まだCDブートが一般的ではなかったことからインストール時の起動ディスク用のアプリケーションとして、また、文字ベースのインタフェース(CUI)として「MS-DOSモード」(ファイル名:COMMAND.COM)を、ME(Millennium Edition)においては、内部的にはMS-DOSを利用していたようですが、CUIとしてのMS-DOSモードは廃止され、起動ディスク作成用途のアプリケーションファイルとしてCOMMAND.COMのみが残されました。
FAT32から(Windows NTで考案された)NTFSに移行した後のWindows 2000/XPに至ってからも内部的にMS-DOS(COMMAND.COM)は残り、やはり、MS-DOS起動ディスクの作成はできるものの、後継として「コマンドプロンプト」(ファイル名:CMD.EXE)というインタフェースが用意されるに至ります。
MS-DOSは、コマンドラインインタフェースであると共にバッチ処理と呼ばれる自動実行のためのスクリプトによる処理用インタプリタ及びコマンドスクリプトとしても利用されており、Windows 98/98SE/MEには、更に強力な機能を持つWSH/Windows Script Hostが搭載され、その後継としてWindows PowerShellがリリースされるに至りました。
XPになるとMS-DOSが担っていたこれらの機能は、コマンドプロンプト(CMD.EXE)が担うことになりました。
また、当初、PCメーカーや販売代理店、一部の大企業など法人用(エンタープライズ版)としてWindows Server 2003/Windows XPベースのWindows PE/Preinstallation EnvironmentというWindows OSベースのGUIの簡易版レスキューOSがリリースされました。
Windows PEは、CD/DVDなどにもインストールでき、ネットワークブート、ネットワークインストールやWindowsの修復機能なども備えると同時にMS-DOSを網羅する機能をごく一部の機能をも持ち合わせています。
この時のPEは、PE 1.xでしたが、その頃、これを作る為のソフトウェアを作ろうとオランダ在住のBart氏がXPベースのPE作成ソフトBart's PE Builderを開発、当初は、Microsoft社が差し止めようとし、結果的に個人使用の場合に限り、黙認ということとなったようでバージョン3.xまでは開発、フリーソフトウェアとして一般に配布されましたが、これに起因してMicrosoft社もWindows Vista/Windows Server 2008ベースのWindows PEのバージョン2(を作成可能なWindows Automated Installation Kit)を無償で一般公開するに至りました。
近年、MS-DOS(MS-DOSモード)は、販売・サポート共に終了しており、基本的に入手できないことからコアなファンの利用の他、現役マシンの再インストール用途や、互換OS含め、仮想マシンのゲストOSとして単独、または、Windows 3.x系/9x系/MEなどサポート期限の切れたWindows OSをインストールする際の起動ディスクとして利用されるのが主な用途となってきています。
仮想マシンによっては、CPUの枠を超えてエミュレートできるものもあり、x86以外のユーザーによるWindowsをゲストOSとする利用もあるでしょうし、まだ個人の多くにPCが浸透しているとは言い難かった頃のWindows 3.xや98 SEと(2000/)XPのつなぎに見えるほど販売期間の短かったMEはともかく、98/98SE搭載PCの出荷台数も多かったであろうことからしてセキュリティアップデートのサポート切れとなった後は、スタンドアローンとして、まだまだ、現役で動いているケースもあるとすれば、こうした用途だけでも結構利用されているとも言えそうです。