クライアントOSとは、IT/ICTシステム稼働時の各種環境やサービスプログラムを提供するサーバとそのサービスを利用するクライアントで構成されるクライアント・サーバ(C/S)システムにおいてクライアント側のPCなどのマシンに搭載されるOSを指します。
尚、オープン系システムとも呼ばれるC/S(やWeb系)システムでは、実際の利用頻度は別として異なるOSを同じネットワーク上で利用することもできるよう工夫されている場合もあります。
これはブラウザをクライアントとするWeb系システムやメインとなるコンピュータのマルチユーザー対応システムやOSをネットワークを介して限られた操作のみを行う物理的な端末や仮想端末から成るメインフレームやミッドレンジコンピュータ(ミニコンピュータ)などとも仕組みは異なります。
C/SシステムにおけるクライアントOSの利用者としては、操作するのが初めてといった人を含め、コンピュータに詳しくない人も想定され、初心者であってもなるべく短期間で必要に応じた操作ができるような工夫が必要であることからGUI/Graphical User Interfaceを持つものが主流となっていきました。
GUIとは、マウス操作を含め、映像や音声など視覚的(、聴覚的)にわかりやすい操作方法や表示機能を持つ仕組みであり、対して従前からあるメインフレームやオフコンにおける専用OSやUNIX(/Linux)は文字ベースのインタフェースということでCUI/Character (based) User Interfaceと呼ばれることがあります。
GUIは、実際には、当初からWindows、Mac OS/OS X、UNIX(ワークステーション等)、PC-UNIX、Linuxなど各種OSが備えていた機能です。
ただ、PC向けでないUNIXは除外するとして、1985年には1.0がリリースされたWindowsが、UNIXとの特許論争を経て1991年誕生したPC-UNIXや一から作られたカーネルであるLinuxよりも先行していたこと、Mac OSはハードウェアがMacintoshのみ、主流となったIBM PC/ATには多くの互換機が生まれ、そのPC/AT互換機にWindowsは予めインストール(プリインストール)され、多くのPCメーカーから比較・選択可能であったことなどから、個人でもWindowsが普及していたこともあり、クライアントOSには、実質Windowsが採用されていることが多くなっています。
Windowsの数あるアプリケーションの中でも業務上重用されたのが、ワープロソフトWord、表計算ソフトExcel、プレゼンテーションソフトPower Point、データベースソフトAccessといったMicrosoft Office製品です。
他方、当初、Windowsに比し、グラフィック性能が高いことをアピールする戦略でデザイン系の業種及びそうした業界を目指す個人や後押しする専門学校、クールでかっこいいと思ったファンなど一定数は、主にMac OS(/Mac OS X)を利用する傾向が見られるようになります。
PC-UNIXやLinuxは、WindowsやMacには遠く及ばないかのように見えますが、ICT業界とは無関係の一般個人や一般法人がOSを意識することの少ない分野で広く普及していましたが、時代と共に更に拍車がかかりそうです。
1991年発売のWindows 3.0、1993年発売のWindows 3.1、1995年~2000年の(NT/)95/98/98SE/ME/2000、2001年発売のXP。。。とデスクトップだけを見てもWindowsは、新製品投入と旧バージョンのサポート期限切れにより次々と世代交代していきました。
しかし、不動産バブルがはじけることになる1991年前後には、そこかしこの企業にPCやコンピュータシステムが当たり前のように導入されている時代ではなく、技術の進歩は著しいものの、一般に活用されるようになって、まだまだ日が浅いともいえます。
そんな折、次々とIT戦略を提案し続けた結果、2000年にはITバブルがはじけましたが、それまでのISDN、INSネットに比し、比較的安価なインターネット接続定額制による常時接続が可能となったADSL、CATV、光などの登場、PCの市場価格低下傾向などによってネット利用者を中心にPCの出荷台数自体は比較的安定していました。
Vista投入までの時間の経過やサポート延長などもあり、長寿命かつ比較的好評であったXPは、徐々にシェアを拡大するに至り、企業や公共機関もホームページを持つのが当然のようになり、ビジネスモデルもインターネットを介したBtoB、BtoCなどにシフトしていきます。
こうした背景にあってインターネットやコンピュータシステムにおいては、ますますウイルスやスパイウェアの存在などの脅威にさらされるようになり、セキュリティアップデートを中心にOSのサポート期限切れは、死活問題にも成り得るようになりました。
ところが、2007年に判明したサブプライムショックに端を発した2008年のリーマンショックによる景気低迷が尾を引いている現代、ましてまだ十分に使えるOSのサポート期限切れ対応は、ICT業界から遠い一般企業ほど意識が薄く、ある程度意識している企業でも二の足を踏みがちと言えるでしょうし、実務上の支障や予算の問題も当然あるでしょう。
社会インフラ、企業の根幹とも成り得るコンピュータ資源は、ファストファッション的発想とは異なり、年々買い替えるというものでもなく、どちらかと言えば、結果数十年もの間、継続的に使い続けてきた、そうしたサポートを前提としたメインフレームのような発想が求められている(、というより、顕在的、潜在的問わずバージョンアップする度に買い替えを要求されるのは論外という思いがある)ものと思われます。
しかしこれまでは、受動的なセキュリティを含むアップデートの利便性の他、公的機関や企業においては、基本的にPC購入時にOSライセンス購入を行うことになり、なんとなく使い慣れているように感じるWindowsを半ば当然のように選択してきたというケースも多いことでしょう。
XPのサポート期限切れ間近と思われる中、背に腹は代えられず、そうした意識をも覆すかのように、ここにきて2000年以降、特に顕著なオープンソースの台頭、Microsoft Officeと互換性を持つOpenOffice.orgをはじめとするOffice関連ソフトの完成度の高さ、Windowsと遜色ないデスクトップ機能などもあり、1991年に登場したPC-UNIXやLinuxが、バックグラウンドでの広がりのみに留まらず、一般企業や個人ユーザーが直接利用するデスクトップ用途としても広がりを見せ始めているようです。
当初のC/SシステムにおけるクライアントPCでは、1台1台クライアント用のプログラムを持ち(、その煩雑さなどからブラウザをクライアントとする構想が生まれ、Web系システムが実現することになりますが、更に)、補助記憶装置など標準的なハードウェア構成及び各種アプリケーションも備えていました。
後にネットワーク上、または、HDDのデータをFDD/CD/USBといった記憶装置のメディアにコピーして持ち出すことが情報流出につながるというセキュリティ上の懸念から、こうした記憶装置のないモニタ、キーボード、マウスほか最低限の構成から成る(thin:「薄い」といった意味の)シンクライアントとする流れもあり、企業のネットワークに従業員が個人所有するPCやPDA(情報端末)などの接続はもってのほかとされました。
そうした環境では、Microsoft Officeは、システムのLANとは別に他のLAN接続のPCやネットワークに接続されていないスタンドアローンのPCで利用されることになります。
他方、時代と共に分散化が進んだり、Web系システムが使われ、クライアントとしてブラウザが利用できるようになり、オフィス入退場用IDカードの採用、また、監視ソフトウェアやログなどのネットワーク上の対策などから、媒体持ち出しの可能性が低くなると必ずしもシンクライアントにこだわらないシステムも増え、むしろフルブラウザのタブレットやスマートフォンが登場すると、逆に個人のこうした端末を会社でも使えるようにしようというBYOD/Bring your own deviceという動きすら出てきています。
セキュリティ面からも個人の持ち出しで企業に利用される点においてもBYODは論外でしょう。
なぜなら、通話料金ばかりでなく、本体購入費用や基本料金、それらのランニングコストを従業員個人が負担することを勧める(、半ば強制する)ことになり、それは労使間の雇用契約とは別のところで業務上の費用を個人負担させることであり、法に触れる可能性も十分にあります。
他方、必要なら企業が支給すればよいことですが、業務とプライベートの境界が曖昧になってしまう問題もはらむのでそれはそれで課題が残りますし、まして個人所有のスマホやケータイに業務連絡が入るのはそれ以上にプライベートの時間が奪われることになります。
更にはビッグデータ云々という現代においては、むしろオフィスのシステムよりも個人の携帯端末のデータ(個人情報)が守られる状況にないことなどの理由からです。
BYODに限らず、別の観点から情報社会を見てみると世界の情報戦、産業スパイも今に始まったことではなく、インターネット利用が普及した現代、セキュリティを声高に謳う一方で、故意に情報を漏えいさせるための穴をあちこちに作っているようにも見えなくもありません。